全身性強皮症を知る

どんな検査があるの?

診察の流れ

なるべく早く専門医を受診して、ご自身の病状を確かめることが大切です。

全身性強皮症では、病気の進行のスピードやどの臓器に症状があらわれるかは患者さんごとに大きくちがいます。そのため、診断と同時に、①進行が遅いタイプなのか、速いタイプなのか、②どの臓器に症状があるか、どの程度の症状なのか、治療の必要があるのかなどを把握することが重要です。ご自身の病気の状況を確かめるために、なるべく早く専門医を受診することが大切です。

全身性強皮症の診断は、問診や診察、さまざまな検査を総合して行われます。

全身性強皮症は、ひとつの検査では診断ができないので、問診や診察、さまざまな検査の結果を総合的に判断する必要があります。

問診
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診察
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検査
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問診では、いつからどのような症状があったか、症状が出る時の状況、家族や親せきに膠原病の人がいないかなどが確かめられます。また、どのような症状が日常生活にどれくらい影響を与えているかも、医師が病気の状態を把握するうえで重要な情報です。ご自身が感じている日常生活への影響を整理しておきましょう。
診察では、視診や触診、聴診によって、皮膚や関節などの全身の状態を確かめます。また、ほかの病気と見分けるための検査や診断に必要な検査が行われます。そのうえで、患者さんの病状を総合的に判断して診断が行われます。

皮膚や血管の検査

皮膚の硬さや硬くなっている範囲は、医師が皮膚をつまむことで調べます。

診察で手指の状態などを確かめます。

診察では、手や足の指先などを観察して、陥凹性瘢痕(かんおうせいはんこん)や潰瘍(かいよう)などを確認します。

爪のつけ根の毛細血管の状態を目視や顕微鏡で調べます。

血液検査

血液検査では自己抗体の有無や炎症の状態を確かめます。

患者さんの血液を検査することで、全身性強皮症であるかどうかの診断や病気がどんな状態にあるかなど、多くの情報が得られます。

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「炎症の状態を調べる検査」

からだの中の炎症の強さを調べます。赤血球沈降速度(赤沈、せきちん)や、CRP(C-反応性タンパク)などを調べる検査が用いられます。

「臓器の状態を調べる検査」

それぞれの臓器の異常を調べます。腎臓の機能を確かめる血清クレアチニン検査や、肝機能の検査、肺のダメージを調べる検査、血糖値やコレステロール検査などが行われます。

「自己抗体を調べる検査」

免疫の異常をあらわす「自己抗体」の検査は、全身性強皮症の診断や、ほかの病気と見分けるために用います。全身性強皮症では、抗核抗体がほぼすべての患者さんで陽性となります。抗核抗体の中でも、抗トポイソメラーゼⅠ抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体、抗セントロメア抗体、抗U1RNP抗体のいずれかが陽性になることが多いとされています。また、病気の進み方とも関連するため、治療方針を考えるうえでの参考にもなります。

肺の検査

代表的な肺の症状である「間質性肺疾患(かんしつせいはいしっかん)」に対しては、定期的な検査が必要です。

間質性肺疾患は、線維化によってだんだん肺が硬くなってしまう病気です。一度肺が硬くなって呼吸機能が低下すると、正常な肺の構造が壊れてしまっているため、元の状態に戻すことは難しくなってしまいます。なるべく早期に発見するため、また、いまの病気の状態を把握するために、定期的に肺の検査を受けることが大切です。背中の呼吸音を調べる聴診、肺の構造をみる胸部X線検査やHRCT(高分解能CT)検査、呼吸機能検査、血液中の酸素濃度を測る検査、血液検査などがあります。

聴診

背中に聴診器をあて、息を吸ったときの異常な呼吸音(「バチバチ、バリバリ」というマジックテープをはがすような硬い音)を調べます。

胸部X線検査

胸部全体にX線を照射して撮影し、肺や心臓の異常を調べます。肺が線維化して硬くなった部分は、白い影として映ります。

呼吸機能検査

HRCT(高分解能CT)検査

血液中の酸素濃度を測る検査

血液検査

肺に炎症がおこったり、構造が壊れたりすると、血液中にKL-6というタンパク質が出てきます。そのため、患者さんの血液中のKL-6の量を測ることで、肺にどれくらいのダメージがおこっているかを確かめます。

6分間歩行試験

からだを動かしている状態での呼吸の機能を評価します。6分間、平地を歩いて、肺や心臓の病気が日常生活にどの程度障害を及ぼしているかを調べます。

肺生検

肺の組織の一部を採取して、組織におこっている変化を調べます。

その他の臓器の検査

それぞれの臓器の状態を確かめるための検査が行われます。

どの臓器に、いつ病変があらわれるかを予測することが難しいため、定期的に検査を受ける必要があります。以下の項目のほかにも、それぞれの患者さんの病状にあわせて必要な検査が行われます。

臓器 検査 わかること
心臓 心電図 不整脈の有無など
肺(肺高血圧症) 心エコー検査 肺高血圧症の有無や心臓の機能
胸部X線検査 肺高血圧症による心臓の肥大など
消化管 内視鏡検査 胃の内容物の逆流などによる逆流性食道炎など
食道内圧検査 食道の蠕動運動の低下など
腹部X線検査 腸閉塞など
血液検査 腎臓の機能
尿検査 蛋白尿や血尿など
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診断基準と重症度分類

難病認定には、厚生労働省研究班が作成した全身性強皮症の診断基準が用いられます。

全身性強皮症の難病認定は、診断基準にあてはめることで行われます。この基準のうち、大基準にあてはまる場合は、ほかの項目に関係なく全身性強皮症と診断されます。また、大基準にあてはまらない場合は、小基準の①にあてはまって、さらに②~⑤のうちどれか1つにでもあてはまれば全身性強皮症と診断されます。

日本における全身性強皮症の診断基準(2016年)1)

ガイドラインに記載されている基準 内容
大基準 両側性の手指を越える皮膚硬化 指のつけ根よりからだ側の皮膚が硬くなっている
小基準 ①手指に限局する皮膚硬化 手指の皮膚が限局的に硬くなっている
②爪郭部毛細血管異常 2本以上の指の爪のつけ根(あまかわ)に内出血がみられる、または毛細血管の異常がみられる
③手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指尖潰瘍 指の先に、傷跡のような小さくへこんだ瘢痕または潰瘍がみられる
④両側下肺野の間質性陰影 HRCT検査などの肺の画像検査で、左右の肺の下のほうに硬くなった変化がみられる
⑤抗Scl-70(トポイソメラーゼⅠ)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体のいずれかが陽性 血液検査で自己抗体のいずれかが陽性となる
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患者さんの重症度は、いろいろな臓器の症状の中で最も重い症状の程度によって決まります。

患者さんの重症度は、皮膚、肺、心臓、腎臓、消化管のそれぞれの症状を評価して、最も症状の重い臓器の重症度で決められます。重症度は0~4の5段階であらわされ、数字が大きいほど重症であることをあらわします。

1) 全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン. 日皮会誌 2016; 126(10): 1831-1896. より作表

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